2026年7月20日から23日までの4日間,イギリス・Cambridgeで開催された IEEE 27th Workshop on Control and Modeling for Power Electronics(COMPEL 2026) に参加した。
筆者にとってCOMPELへの参加は3回目となる。これまでミシガン大学,テネシー大学で開催されたCOMPELに参加してきたが,今回は世界屈指の学術都市Cambridgeが舞台となった。
「COMPELという少し変わった国際会議」
COMPELは,ECCEやAPECのような数千人規模の国際会議とは異なり,この分野の研究者が集まる比較的小規模なWorkshopである。
最大の特徴は,4日間を通してセッションが1つしかないことだ。参加者全員が同じ会場で同じ発表を聴講し,昼食やコーヒーブレイク,夕食もほぼ同じメンバーで過ごす。そのため,研究者同士の距離が非常に近く,普段は論文でしか名前を見ないような研究者とも自然に議論が生まれる。まるで世界中の研究者が集まる研究合宿のような雰囲気であり,これがCOMPELならではの魅力だ。
今年は開催地がCambridgeということもあり,例年以上の人気となった。参加希望者は当初の想定を大きく上回り,Workshopとしては異例の規模で開催された。やはり,多くの研究者にとって,一度は訪れてみたい場所なのだろう。
「まるでハリー・ポッターの世界」
Cambridgeの街を歩くと,何百年もの歴史を持つCollegeが今も学生たちの日常の一部として使われていることに驚かされる。石造りの建物や静かな中庭,歴史を感じる街並みは,まるで映画「ハリー・ポッター」の世界に迷い込んだようだった。


滞在中には,Cambridgeで最も古いCollegeの一つであるPeterhouseでHigh Table Dinnerに参加する機会があった。歴史あるDining Hallでは,蝋燭の灯りの中,先生方がガウン姿で食事を楽しんでいる。その光景は,長い歴史を受け継ぐCambridgeらしい文化を感じさせるものだった。
「イギリスでおいしい食事をしたかったら,朝ごはんを3回食べればいい」
幻想的な街並みとは対照的に,食事は忘れられない思い出となった。前菜は「サーモンの照り焼き」と説明されたものの,「これが照り焼き?」と思うほど味付けは控えめだった。続くメインは茹でた枝豆,ジャガイモ,ニンジン,そして牛肉。野菜は素材そのものの味で,牛肉だけが唯一の救いだった。

そのとき,イギリスの作家サマセット・モームの言葉を思い出した。
“To eat well in England, you should have breakfast three times a day.”
「イギリスでおいしい食事をしたかったら,朝ごはんを3回食べればいい。」
もちろん,おいしいレストランもたくさんある。しかし,大学での食事を経験すると,この言葉には思わず納得してしまった。
「発表を通して感じたこと」
今回は,筆者が口頭発表を行ったほか,磯部先生がSession Chairを務めるなど,研究室としてCOMPELへの参加が恒例になってきたことを感じた。

世界の第一線で活躍する研究者を前にした発表は,これまで以上に緊張した。一方で,強く印象に残ったのは,多くの研究者が自信を持って,自分たちの研究の面白さを楽しそうに語っていたことである。研究成果を報告するだけでなく,「この研究は面白いでしょう」と会場全体で共有するような雰囲気があり,質疑応答も含めて発表そのものを楽しんでいるように感じた。
自分はそのような雰囲気を作ることができなかった。英語力だけではなく,研究の魅力を伝え,聴衆を巻き込むプレゼンテーションそのものを,もっと磨いていきたいと感じた。
発表後の昼食では,ある研究者から「探していたよ」と声をかけられた。話を聞くと,取り組んでいる研究テーマが驚くほど近く,お互いの結果や考え方について議論が大いに盛り上がった。世界でも同じ課題に取り組む研究者がいることを知り,自分たちの研究を改めて客観的に見つめ直す良い機会となった。
COMPELでは,発表だけでなく,その前後の何気ない会話から新しい視点や気づきを得られることが多い。今回の4日間を通して改めて感じたのは,こうした研究者同士の距離の近さこそが,このWorkshopの大きな魅力だということである。
Cambridgeで得たものは,発表実績だけではなかった。世界中の研究者と直接議論し,自分たちの研究を見つめ直す貴重な機会となった。そして,こうした出会いや対話が,次の研究への新たな原動力になるのだと感じている。
